10.30
2015 ARTIST

ゲルハルト・オピッツ、「シューマン×ブラームス連続演奏会」によせて

2015年より連続演奏会の第3弾「シューマン×ブラームス連続演奏会」(全4回)をスタートさせる、ドイツ・ピアノ界の巨匠、ゲルハルト・オピッツ
この新シリーズによせて、オピッツよりエッセイが届きました。

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ドイツ・ロマン派の主導的作曲家であるロベルト・シューマンとヨハネス・ブラームスは友人関係にあった。20歳のブラームスは、当時43歳であったシューマンに会うため、デュッセルドルフまで足を運んでいる。ブラームスはシューマンの作品を以前から崇拝しており、シューマンと彼の妻であるクララ・シューマンの前で自分が作曲した作品を数曲演奏した。それを聴いた二人の芸術家はすぐに、若きブラームスの天才的な才能に大いに感動した。

「今月は素晴らしい人物、ハンブルグ出身の20歳のブラームスと出会う幸運をわたしたちにもたらした。彼もまた神からじかに使わされた天才のうちの一人なのだ。彼は自作のソナタやスケルッツォを弾いてくれた。それらはすべて豊かな想像力、感性の深さ、形式の統御を示している。ブラームスには差し引いたり、付け加えたりするものは何も無いとロベルトは言っている。(岸田緑渓:シューマン 音楽と病理 (1993))
演奏中にとても美しく輝く興味深い若々しい顔、もっとも難しい箇所でさえいとも簡単に演奏してしまう美しい手とこのユニークな作品たち、このような人間がピアノに座っているのを見るのは本当に感動的だ。彼が私たちに演奏した作品は傑作であり、親愛なる神は彼を完全な形でこの世に送り出したと思わざるを得ない。美しい将来が彼の前には広がっている。というのも彼がオーケストラのために作曲し始めたなら、彼のファンタジーを表現するのにふさわしい領域をようやく見つけるだろうから」

クララ・シューマンは、自身の日記にこのように書いた。また、ロベルト・シューマンは自身が創設した『新音楽時報』に以下のように記している。

「私の考えでは、ある時、突然として、この時代の崇高で高尚な流儀の表現をする人が招聘されるのを期待していた。そうだ、彼が来たのだ。現れたその若者は、すでに彼のユリカゴの横で優美な女神と英雄に見守られていた。彼の名はヨハネス・ブラームスだ。彼の外見もまた“才能に溢れた人物だ”と私たちに告げる全ての特徴を備えている。ピアノの前に座り、素晴らしい幻想のさまざまな領域を啓示していた。彼がその魔法の杖を振り下ろし、合唱やオーケストラの幾多の能力に彼の力を付与するようになるならば、その時、われわれの精神世界には、一層神秘的な輝きが現われることだろう」

このように、シューマンはブラームスの名前が音楽界で大きな注目と尊敬を浴びるのに一役買ったのである。この二人の芸術家の親交があったのは、シューマンの早期な死までの3年にも満たない期間であったが、その間お互いの芸術的意見を交換し、刺激し合った。

――ゲルハルト・オピッツ
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Gerhard Oppitz sw_(c)Concerto Winderstein
2015年11月19日(木)19:00
東京オペラシティ コンサートホール

シューマン:子供の情景 op.15/幻想曲 ハ長調 op.17
ブラームス:2つの狂詩曲 op.79/ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ op.24

全席指定 S¥6,000 A¥5,000 B¥4,000 学生\3,000