12.03
2018 ARTIST

ゲルハルト・オピッツ、シューマン×ブラームス連続演奏会(最終回)へのメッセージ

ドイツ・ピアニズムの巨匠と謳われ、日本でも大人気のピアニストであるゲルハルト・オピッツから、4年にわたり開催してきた”シューマン×ブラームス連続演奏会”の最終回に向けてメッセージが届きました。


シューマン×ブラームス連続演奏会の最終回に寄せて

 シューマンとブラームスの世界を旅する今夜のプログラムでは、この二人が若き頃の佳品をお届けし、連続演奏会の幕を閉じます。
 「蝶々」と「謝肉祭」はとても華やかな作品で、およそ200年前に人気を博した仮面舞踏会を想像し、詩的に活き活きと描写したものなのです。シューマンは実際の舞台にバラエティに富んだ様々なキャラクターを登場させ、彼らの明るい人格と、秘密で内向的な感情を強調しました。「蝶々」では、まるで蝶のように飛び回るそれぞれのキャラクターに、自由に想像して名前を与えることができます。一方で「謝肉祭」は、既にそれぞれ名前が付けられており、「告白」「返事」「巡り合い」などの数曲では、彼らの交流を描写しようとしました。このop.2とop.9の両作品とも、2世紀にもわたりピアニストや音楽愛好家を魅了し続けてきました。
 私の初めてのリサイタルを今でも覚えています。当時13歳だった私は「蝶々」を弾き、この音楽から溢れ出るアイデアや感情の豊かさ、熟考のひととき、そして人生の喜びを心から楽しんだのです。「謝肉祭」は18歳の時に初めて演奏しましたが、この素晴らしい傑作に魅了されてから数十年、今でもすべてのピアノ・レパートリーの中で、もっとも偉大な作品の一つだと捉えています。最高にロマンティックで、演奏家と聴き手を刺激的な旅に引き込むのです。
 後半は、その温かさ表れる若きブラームスの佳作をお聴きいただき、深遠なるシューマンへの畏敬の念にも心を注ぎたいと思います。ピアノ・ソナタ第2番では、ブラームスが若くして既に我がものとしていた雄大な芸術的地平の、驚くべき内容を垣間見ることができます。ブラームスが詩的感覚と新たな経験への熱狂を表したこの勇敢な作品を完成させたのは、わずか18歳の時でした。ロベルトとクララのシューマン夫妻がこの未来永劫輝く芸術家に会うことに決めた1853年、デュッセルドルフで初めて演奏された曲の一つです。ブラームスがシューマンへの尊敬を込めた「シューマンの主題による変奏曲 op.9」を作曲したのは、その1年後でした。この作品にはシューマンの「色とりどりの小品 op.99」から短くシンプルな主題が用いられていますが、クララは既に自身の変奏曲にそれと同じ主題を使っていたのです。ブラームスが同じ題材で作曲したことで、クララは彼の主題の扱い方にとても驚き、オリジナルのアイデアをクララよりずっと冒険的に使うことのできたブラームスの才能に驚嘆したのだろうと思います。
 連続演奏会を締めくくる今夜は、互いを尊敬し高め合った二人の作曲家の間に通じた友情を示す、最良のプログラムとなるでしょう。

ゲルハルト・オピッツ
Gerhard Oppitz sw_(c)Concerto Winderstein
2018年12月14日(火)18:30開場/19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール

シューマン:蝶々 op.2/謝肉祭 op.9
ブラームス:
  シューマンの主題による変奏曲 op.9
  ピアノ・ソナタ 第2番 嬰ヘ短調 op.2

◎チケット
全席指定 S¥6,000 A¥5,000 B¥4,000 学生\3,000
*学生券のお取扱いはパシフィック・コンサート・マネジメントのみです。