02.08
2018 ARTIST

オリ・ムストネンからビデオ・メッセージ!

まもなく9年ぶりの来日を果たすオリ・ムストネン(ピアノ・指揮・作曲)からのビデオ・メッセージをご紹介します!
<リサイタルへのメッセージ>

2月に東京で演奏するリサイタルのプログラムについて、少しお話したいと思います。
私が心から敬愛するシューマン、プロコフィエフ、ベートーヴェンをお届けします。

はじめに演奏するシューマンの「子供の情景」は、本当に素晴らしい名曲です。独創的かつ斬新で、独自の作品であり、私にはなぜかとても現代的に感じます。その様式は非対称であると同時に密接で自然でもあり、時々ほぼ半ばというところで曲を止めるのです。そのような組み合わせが本当に素晴らしいと思います。1曲目の「見知らぬ国と人々について」というタイトルは、子どもが本や地図を読んだり、遠い国で人々に出会う想像の旅を思い起こさせます。そしてこの音楽は後に続く偉大な作曲家たちにも多くの影響を与えました。チャイコフスキー、プロコフィエフ、バルトーク、ドビュッシーらは、子どもの世界からインスピレーションを受けて作曲したのです。しかし私が思うに、シューマンは愛情、叡智、そして素晴らしい人間性といった子どもの世界を真に見つめた最初の人で、これはまさに傑作なのです。

続くプロコフィエフのソナタ第8番はもっとも交響的なソナタと言えるでしょう。私は今、プロコフィエフの9つのソナタを2回のリサイタルで全曲演奏しているところです。第9番のソナタは、変ロ長調という調が、第5番の交響曲と同じように、偶然ではなく使われているように思います。第一楽章はまるで、彼が驚くべきストーリーを話はじめると時間が止まるような感じです。聴き手を魔法の絨毯で見知らぬ世界へと誘うかのように。今どこにいるのか忘れています。驚くべき独創的な音楽によって、祈りの中にいるのです。20世紀のピアノ・レパートリーの中でも、まさしく重要な作品の一つと言えます。

そして後半にはベートーヴェンから2曲お届けします。1曲目は「森のおとめの変奏曲」です。ベートーヴェンは皆さんが知っている偉大な作曲家ですが、この作品はあまりコンサートでは耳にすることがありません。子どもの頃から特別に好きな曲で、エミール・ギレリスの録音をよく聴いていたのを覚えています。小さい時から長年弾いています。ロシア舞曲に基づく12の変奏曲が描かれていて、ただただこの曲が大好きなのです。

そして「熱情ソナタ」は、ベートーヴェンの全作品の中でも本当に並外れたものです。たとえ何回この曲を聴いても、常に新しい何か、新しい層を発見するのです。ベートーヴェンは偉大な作曲家で、まるで巨大な森に足を踏み入れるかのように感じます。誰かはこう言うでしょう。「一度『熱情ソナタ』は聴いたことがあるから、もう一回聴かなきゃ」と。これは、「一度その森を歩いたことがある」と言うのと似ています。その森を歩いた時、訪れるたびに、新しい層や新しいものを見つけるのです。はじめに巨大な木々に目が行き、森に生きる小さな植物や動物たちを見つけるのです。『熱情ソナタ』はこのように偉大な作品です。皆さんは聴く度に、そして私は弾く度に、新たな発見と多くの叡智を得るのです。もちろん、概して暗い性質を持っていますが、しかしそこにはそれを押し付けるものはなにもありません。生命の力なのです。私たちピアニストは、こんなにも素晴らしい作品があってラッキーですが、ベートーヴェンの『熱情ソナタ』ほどの曲は見当たりません。

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オリ・ムストネン ピアノ・リサイタル
2018年2月10日(土)13:30開場/14:00開演
すみだトリフォニーホール

シューマン:子供の情景 op.15
プロコフィエフ: ピアノ・ソナタ 第8番 変ロ長調 「戦争ソナタ」 op.84
ベートーヴェン:ヴラニツキーのバレエ「森のおとめ」の
ロシア舞曲の主題による12の変奏曲 イ長調 WoO.71
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 「熱情」 op.57
全席指定 S¥6,000 A¥5,000 学生\3,000
<公演情報>
2018年2月16日(金)19:00開演
京都コンサートホール
※一人三役