10.03
2016 NEWS

マエストロ・サー・ネヴィル・マリナーの逝去に寄せて

マエストロ・サー・ネヴィル・マリナーの逝去に寄せて


指揮者のサー・ネヴィル・マリナー氏が、2016年10月2日に逝去されました。今年4月に92歳の誕生日を迎えた氏は、精力的に演奏活動を続けておりましたが、ロンドンの自宅で安らかに息を引き取りました。

映画「アマデウス」の音楽監督を務め、膨大な数のレコーディングを世に送り出したことで知られるマリナー氏は、1958年にアカデミー室内管弦楽団を創設し、近年は終身総裁として精力的に当団を指揮しておりました。

2016年4月には、アカデミー室内管弦楽団と来日公演を行い(東京・大阪)、矍鑠(かくしゃく)とした指揮から紡ぎ出される、流麗でありながら聴衆の心にそっと触れる温かな音楽を響かせました。次の来日を楽しみにしていた矢先の悲報でした。世界中が悲しみに暮れています。

私共は、氏を敬愛の意と共に「マリナー先生」とお呼びしておりました。マリナー先生の周囲はいつも笑顔で溢れ、長年にわたり世界中に素晴らしい音楽を届けてくれたことに、深い感謝の気持ちを表すとともにご冥福をお祈りしたいと思います。


パシフィック・コンサート・マネジメント

Sir Neville Marriner 2016_1(c)Pacific Concert Management
Sir Neville Marinner_3_2016 Birthday
サー・ネヴィル・マリナー

 1924年、イングランドのリンカーン生まれ。ロンドン王立音楽大学とパリ音楽院でヴァイオリンを学ぶ。その後、マーティン弦楽四重奏団の第2ヴァイオリン奏者を務め、音楽学者サーストン・ダートと共にジャコビアン・アンサンブルを創設。当初、イートン校でヴァイオリンを教えていたが、そのかたわらでピエール・モントゥーに指揮の指導を受ける。1952年フィルハーモニア管弦楽団に入団し、その後、1956~68年にはロンドン交響楽団の第2ヴァイオリン首席奏者を務める。この間、トスカニーニ、フルトヴェングラー、カラヤン、モントゥーなどの名指揮者のもとで経験を積む。
 1958年、アカデミー室内管弦楽団(アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ)を創設。コンサート・マスター兼指揮者として活動をはじめたが、その後、指揮に専念する。当初、アカデミー室内管弦楽団は弦楽器だけのアンサンブルで、バロック音楽や古典派・ロマン派の弦楽作品をレパートリーの基本としていたが、次第に管楽器も加えて古典派の交響曲の演奏を行うようになる。その後、通常のオーケストラの編成まで規模を拡大し、シューベルト、メンデルスゾーン、ブラームスの交響曲全集録音などにも取り組む。
 1969年からロサンジェルス室内管弦楽団の音楽監督を務め、客演も含めた指揮活動が本格化してゆく。1971~73年ノーザン・シンフォニアの準指揮者を兼務し、1979年~86年ミネソタ管弦楽団の音楽監督、1983年~89年シュトゥットガルト放送交響楽団の首席指揮者を歴任。1985年には、「ナイト」の称号を受ける。ウィーン、ベルリン、パリ、ミラノ、アテネ、ニューヨーク、ボストン、サンフランシスコ、東京の各地でオーケストラを指揮し、日本では、NHK交響楽団、東京都交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、札幌交響楽団、オーケストラ・アンサンブル金沢、兵庫芸術文化センター管弦楽団を指揮している。
 アカデミー室内管弦楽団とは膨大な数の録音を行ない、世界的な評価を得ている。モーツァルトの交響曲全集と、ブレンデルとのモーツァルト協奏曲全集の録音は特筆されよう。映画「アマデウス」のサウンド・トラックでは指揮及び音楽監督を務め、3部門のグラミー賞を獲得した。現在はアカデミー室内管弦楽団の<ライフ・プレジデント>の肩書きを持ち、2014年4月には、90歳の誕生日を記念してロイヤル・フェスティバル・ホールで開催されたバースデー・コンサートで指揮し、大喝采を浴びた。
 2014年、長年にわたって数多くの録音を残してきた功績を讃え、ロンドンのグラモフォンから特別賞を授与された。
 2016年10月2日、ロンドンの自宅で安らかに息を引き取った。